生物の謎

カラスの知能はどのくらい?他の鳥類より賢いのか?

朝、ゴミ収集場でゴミ袋を開けて食べ物をあさるカラスの姿をよく見ると思います。

これらの被害を食い止めるために、カラス対策をおこなっているにも関わらず、それをすり抜けてゴミをあさるため、非常に頭が良い鳥と言われています。

しかし、カラスは本当に頭が良いのでしょうか?

そして、他の鳥と比べても賢いのでしょうか?

この記事では、そんな疑問に答えていきたいと思います。

カラスの脳の大きさとは?

動物の解剖学的に見ると、カラスは他の鳥と比べてかなり大きい事が分かっています。

脳の大きさを示す数値として、「脳化指数」というものがあります。脳化指数とは、動物の体全体の大きさに占める脳の大きさの割合を示したもので、以下に脳化指数のおおよその数値を載せています。(文献によっては人間を10として掲載しているところもあり、今回はネコを1として掲載しています。)

鳥の種類脳化指数その他動物脳化指数
カラス1.50人間7.4-7.8
オウム(飼育)1.40イルカ5.3
インコ(飼育)1.40チンパンジー2.2-2.5
カモ0.35サル1.7-2.7
ニワトリ0.25イヌ1.2
ハト0.25ネコ1

脳化指数だけで判断すると、頭の良いと言われている人間、イルカ、チンパンジー、サルにつぐ脳化指数であり、人間の言った言葉をそのまま返すオウムやインコとほぼ同じであるため、脳化指数だけで知能の良し悪しは判断出来ませんが、おおよそ参考にする事が出来ます。

鳥類の中では、脳化指数は郡を抜いています。

カラスの知能指数は?

脳の大きさを示す脳化指数ですが、実際のカラスの知能指数はどのくらいなのでしょうか?

イギリスのある研究によるとカラスの知能は人間の7歳の知能とほぼ同じという研究結果を出しており、以下の動画を見てもらうと分かりますが、ケンブリッジ大学の実験では3歳〜4歳の子供たちが困難であると想定される内容をカラスが簡単にクリアしています。

[動画内容]

カラスの近くにある短い棒、左側には食べ物が入った箱、真ん中の3つはそれぞれ石が1個ずつ入った箱、右側には長い棒が入った箱があります。しかし、短い棒で食べ物を取ろうと思っても、食べ物に届かず取る事が出来ません。果たしてどのようにして取ったのでしょうか?

また、カラスの脳研究に詳しい宇都宮大学の杉田昭栄教授によると、カラスは、簡単な三段論法的な知能行動ができるとの事で、人間では7歳くらいから、三段論法的思考ができるようになるため、カラスの知能指数は人間でいう所の小学校低学年くらいの知能はあると言えます。

三段論法的思考とは、

AはBである。BはCである。つまり、AはCである。

といった内容の事です。

例えば、人をA、必ず死ぬをB、私をCとすると、

・大前提:人(A)は、必ず死ぬ(B)。

・小前提:私(C)は、人(A)である。

・結論:私(C)は、必ず死ぬ(B)。

という事です。

こういう思考をカラスが持っているとなると、なかなかの知能であると言えます。

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カラスの記憶力とは?

カラスを攻撃した人を記憶して、後日仕返しで襲いかかるという話しはよく聞くと思います。

人でも通勤通学中に足を踏まれたとして、足を踏んだ人の顔を覚えて、後日会った時に文句言ってやろうと思いますが、正直覚えていないと思います。(苦笑)

そういう意味ではカラスの瞬時の記憶力はすごいというのが分かりますが、実際のカラスの記憶力はどれくらいなのでしょうか?

カラスの記憶力に関しては、様々な実験や調査の結果で分かった事があり、その一部をまとめてみました。

人間の顔の記憶

ワシントン大学のジョン・マーズラフ教授によると、ニューカレドニアで捕獲したカラスに、足環をはめたのですが、5年半経過しても、捕獲した人間の顔を覚えていて、近くを通ると威嚇行動をするとの事でした。

しかも、カラスは自分以外の仲間に、捕獲した人間の情報を伝えているため、1匹のカラスを捕獲しても、仲間達が足環をはめた人間を見ると襲いかかってきます。

先程も言いましたが、足を踏んづけられた人に足を踏み返してやろうと思っても、翌日には顔を思い出せないことがほとんどなのに、5年半の間に、何かのタイミングで遭遇しても、何も思わないどころか、足を踏まれた事すら忘れていると思います。

そのため、カラスは記憶力だけでなく、認知力も凄いという事が分かります。

過去の行動した記憶

仕事で初めてやる作業を、職場の先輩に教えてもらう機会は多いと思いますが、ほとんどの人は一度では習得出来ずに、何度も先輩に聞きながらやります。まして、その作業が半年や一年に一回しかない作業の場合、翌年にもう一度先輩に聞いて教えてもらうというのがオチではないでしょうか。

カラスの場合、ある実験でカラスに餌の取り方を一度だけ教えて、その作業を1年後に再びやってきちんと出来るかという事を検証しました。

その結果、4匹中3匹のカラスが90%以上の作業を完璧に覚えていたとの事です。

貯食

私たちは、普段スーパーなどで買い物したとき、冷蔵庫や冷凍庫に食材や飲み物を入れます。しかし、冷蔵庫の中にたくさん食材が入っているせいで、気がつけばうっかり賞味期限や消費期限を切らしたという経験は誰でも一度はあるかと思います。

カラスも、基本的にエサをまとめてとっておき、冷蔵庫と同じように餌を蓄えて、後から取り出して食べる貯食という行動をとります。

しかし、カラスの場合、冷蔵庫みたいに一ヶ所に集中して保管するのではなく、100ヶ所以上の場所に餌を隠しており、どこに何の餌がどのくらいあるのか、餌の状態(腐る直前、食べ頃など)まで、きちんと把握しているそうです。

ここまでくると、カラスに英才教育したら、完全に人と同じ立場に立つ事も出来るくらい凄いです。

カラスと他の鳥類と比較してみると

カラスは動物学上の分類では鳥類ですが、カラスの脳は他の鳥類の脳とは全く異なっている事が分かっています。行動生物学者のあいだでは、カラスを「羽をもった霊長類」呼ぶことがあるくらいです。

この記事でもある程度お話してきましたが、カラスが羽をもった霊長類と言われる最大の理由は以下の2つで、社会的な行動をしている霊長類を含む哺乳類とほとんど変わらないからです。

・カラスは自分で道具を作り、それを使い、また数多くの餌場の位置を記憶することが出来る

・自分以外のカラスが何をしているのか見て、社会的な行動をすることが出来る

最後に

カラスは非常に社会的な行動をするため、私たち人間と行動心理はそこまで大きく変わらないと思います。

カラスは非常に凶暴で襲われるというイメージがありますが、カラスに対して威嚇したり傷付ける事があると、集団で襲いかかりますが、逆に言えば、カラスにきちんと向き合って接すれば、カラスは何もしてきませんし、恩返しをする事もあるそうです。

そういうところは人間とそっくりだと言えます。